『永遠をさがしに』原田マハ著 読了
久しぶりにマハってみた
『永遠をさがして』の文庫本バージョンの表紙の木彫り、素敵だね。
さて、気を落ち着けて・・・
原田マハさんと言えば『楽園のカンヴァス』を書いた作家として有名。
キュレーターとして経験を生かした美術関連の小説を得意としている。
だもんで、時々ふと思う・・・
「キュレってるだけでいいんじゃね?」
なぜならば、「なしマハ」といった作品が多く、安定していないのだ。
さすがに本を閉じて「ペッ!」と舌打ちして「キュレってろ!」と怒鳴り散らしたりはしないが・・・してる人もいるらしい。
あらすじ
世界的な指揮者の父が海外赴任となり、ひとり日本に残った女子高生の和音(わおん)。
そこへ突然新しい母がやってきた。型破りの彼女には秘めた過去があり。
母と娘、音楽。女性たちの再生物語。
Amazon内容紹介より引用
キュレって無い・・・
はい、美術作品は出てこない・・・
キュレって無いってことは、慎重にならざるを得ないのだが、出だしの一文を読んで確信した。
「小鳥が、逃げた。」
これは、大丈夫なマハだ。 と。(偉そうでごめんなさい)
音楽の世界に足を突っ込んだマハ作品。初か?
世界的な指揮者の父の子の名前が和音(わおん)だからといって、文庫本をちゃぶ台に叩き付けるのはちょっと待てだ!
だって、それ、ちょっと作品的に美味しいポイントなんだから。(笑)
当の本人だって、自分の名前が安直過ぎて父親に向かって物申している。
超恥ずかしいとかって!
しかも、「なんで「のだめ」とかにしてくれなかったのかな、、もう~っ」とまで言ってる💦
チェロやマエストロといったクラッシックに明るくない私には興味のない環境の物語だけれど、そんな小道具を使っているくせにみるみる音楽の世界へと誘われてしまう。
あれ?これって?どっかで・・・
2016年度 本屋大賞1位『羊と鋼の森』に似てる
今話題沸騰中の本屋大賞1位を受賞した『羊と鋼の森』宮下奈都著にどこか似ている。
あっ、本屋大賞おめでとうございます。
私、4位だなんて予想しちゃったけど、本当馬鹿でした。
本屋大賞も捨てたもんじゃないわ。
この作品なら使ってない脳の文字を映像に変換するどっかを刺激すること間違いなしだわ!
でも・・・
もしかして、宮下さん、この『永遠をさがしに』の影響バッチ受けてたりする?
と、チラッとよぎるほど、ちょっと雰囲気が似ていた。
でも、やっぱマハさんの文章は読みやすい時と、そうでない時がある。これは表現力が素晴らしかった。
「羊・・・」でも、ピアノの調律の世界を文字に乗せて読者の想像力を掻き立て五感を刺激して読み終わりたくない、手元に置いて何度も読み返し、その世界に再び足を踏み入れたいと思わせるオーラをまとっていた。
そして、『永遠を・・・』の解説がなんと宮下奈都さんだった。
もう、絶対この作品をリスペクトしただろ?と、イッシッシとあれこれ想像しちゃったわ。あの書き方は、こっちのここよ!みたいにね。
でもまあ『永遠を・・・』は、そんな五感な点では「羊」よりは少し劣るかもしれない。
しかし、天才マエストロの娘、和音と突然現れた継母の真弓との真っすぐで熱い体当たりな関係が実に心地よい。
あの西加奈子の『漁港の肉子ちゃん』を彷彿させ、ニシカナ風のユーモアよりも上品で少し気取った感じのソレが、マハ流だな~納得の花丸だ。
真弓と和音の掛け合いがどうもしっくり来るのは、しょっぱなから真弓の人間性に惚れてしまったからかもしれない・・・
手にしたものを失う時
才能というのは、努力してもどうしたって駄目なもんがある。
音楽家は、小さな頃からの環境と指導力によって才能が伸びるらしい。
しかし、幼少時に自分の意志ではなく「させられていた」ものを、手放す時がやってくる。これは自分の意志なのだろうか?と、悩む時が「壁」なのかもしれない。
ピアノ教室に3歳から通っていた私は、どうやって教室をサボるか毎回頭を悩ませていた。結局、やめてしまったが後悔などしていない。(笑)
しかし、生まれ持って才能がある人間は違う。
再び、自ら何かの「きっかけ」と出会い育んだ才能を伸ばして「自分の意志」で音楽を奏でる時が来る。
Amazonの書評が酷すぎる
この作品って、Amazonでかなりこき下ろされてるって噂だったから覗いてきた。
安っぽい韓流ドラマみたいだ!とそりゃ、気持ちよく言いたい放題だった。
こんなスパッと切ってかかっているレビューは嫌いじゃない。
でも、残念だが、この作品はキュレって無いマハさんの新境地を見た!と言ってもいいよ。
自分が母となって、自分の母を思い出し、娘の立場に思いを馳せ、あの日、夢中になってステッドラーの鉛筆を握ってデッサンしていた学生時代にタイムスリップした。
★5つ!自信を持って♪