『私の命はあなたの命より軽い』近藤史恵著 読了
あらすじ
仲のよかった家族に一体何が。
ページを繰る度に覚える違和感。そして続く衝撃!
『サクリファイス』の著者が「命の重さ」を描く渾身ミステリー!!
東京で初めての出産をまぢかに控えた遼子。
夫の克哉が、突如、ドバイへ赴任することになったため、
遼子は大阪の実家に戻り、出産をすることに。
実家に帰ると、両親と妹・美和の間に、会話がないことに気がつく。
そして父は新築したばかりの自宅を売却しようとしていた。
実家で何があった?
明らかになっていく家族を襲った出来事とは――。
「どうして人の命の重さには違いがあるの?」
(「BOOK」データベースより)
気になって手につかない本
「物事がうまくいかないのは今にはじまったことじゃない。」
小説の最初の一文って、本の装幀やタイトル同様に重要だ。
書店で、お持ち帰りしてもらえる宣伝効果って、最初の一文がいかに気になる情報を含んでるかだと思う。
この一文で、この主人公は今現在なんかうまくいってないし、今までもそうだったとネガティブ発信してる様から、門が開かれた。
なになに?どうしたんだよ一体!
と、両の手で結界を作り読書タイムへと突入する。
頁数は239なので一気に読めちゃうストレスフリーな中編なのが今の自分にちょうどいい。
一気に読めちゃうからって、色々とやることあるんだから、三日くらいで読了しようと計画していたんだけど、ダメだったわ。
今日の、午後に開いてしまったら最後・・・・一気読みさせられた。あは
え?もしかして、あの人がああだったとして、こうなってしまったのかも?だとしたら、えええーーーやだあーーーーー!
と、勝手に妄想し始めて、あれ?違うっぽい・・・じゃあ、どうしたんだ?
もう、主人公と一緒に実家に起こった違和感が何なのか知りたくて仕方ない。
お腹に赤ちゃんがいる事なんて、主人公も私もすっかり忘れてしまったかのように、安定した精神とは全く違って心配ごとだらけで心がチクチクしてザワザワだった。
遼子にモヤモヤ
一気読みさせられたのは主人公の遼子がいつまでたっても頭の中でブツブツと実家の違和感に対して考えてるばかりで本当にモヤモヤ大魔神だぜ。まったく・・・
壁ドンでもして両親に「本当のこと言ってよ!」と、迫らないのが居ても立っても居られないんだよ。
(壁ドンの使い方間違ってる?)
おい!妊婦だろ?娘だろ?こんな空気胎教に悪いんだから、スッキリさせてくれっ!
遼子は、家族であっても勢いで話をせずに、一呼吸おいてから話をするように躾けられていたようだから、こうなってしまうんだろうな・・・
ってか、これ、作者が読者に敷いたテクで間違いない?
この、モヤモヤ感が「本から決して逃がさないぞー」っていう近藤さんの狙いな。
命に重さの違いがあるのか?
タイトルを見た時に、自分の命が軽いって考えてる主人公の話だと思った。
ネタバレはしない。その方が絶対に楽しめる。
読了後は、タイトルの意味が深く重くのしかかる。
お楽しみに!
最後から9行目にツーーー
最初の1行目で掴みはオッケーな作品っていうのは、最後にも何かやらかすんだよね。
この作品、最後から9行目に背筋からツーーーと冷たいものが伝って落ちるゾワゾワの結末が待っている。
近藤史恵さん・・・いじわるだな。
妊娠中の方には、今読む本としてはおススメできないな。
あ、小川洋子さんの『妊娠カレンダー』も妊娠中には絶対ダメよ。
近藤史恵さん、気になる他の作品
彼女1969年生まれで1993年に『凍える島』でデビューしてるのね。
(私と同じ歳だーーーー)
今まで、書店で目に留まった作品は表紙のコックさんがイカシテル2作品。
『ヴァン・ショーをあなたに』
『タルト・タタンの夢』
これから読みたいと思った作品が
『はぶらし』
『岩窟姫』