なないろ日記 ~りんごの国から~ 

読書・折り紙・エコたわし作り・靴下わっか指編み・お絵かき・展覧会 あれもこれもと、七色にコロコロと襲い来る趣味との戦いの壮絶な記録!!

『異邦人(いりびと)』原田マハ著 読了

『異邦人』と書いて「入り人」と読ませる

この作品を手にした時、重厚な表紙と題名で、日本版カミュ『異邦人』か?

と、カミュの代表作を思い出してしまった。(読んでないけど・・・)

カミュの作品は『異邦人』をまんま「いほうじん」と読ませるのに対して、マハさんは、「いりびと」と読ませている違和感にぶち当たる。

 

物語の舞台となる京都では元からそこに住む「地の人」に対し、他所から来た人を「入り人」と呼ぶらしい。そんな京都の人々の少し閉鎖的な地域性を作品の『異邦人』へと重ねたのではないだろうか?

 

あらすじ

主人公の菜穂は、夫の篁一樹が老舗画廊「たかむら画廊」の跡取り息子で、菜穂自身も個人美術館「有吉美術館」の副館長をしているという絵画に造詣が深い女性だ。2011年3月の福島の原発事故による放射能漏れから避難するように京都にやってきた菜穂は妊娠していた。(篁って苗字、難しいぞって思ったの私だけ?)

「よりによってこんな時に・・・」と、自分の妊娠に素直に喜べない菜穂。

移り住んだ京都で、無名の画家の一枚の日本画と出会う。
それはまるでクレーのよう・・・いや、クレーとも違う。

京都で出会った一枚の絵が、彼女の運命を大きく変えていく。
この菜穂という女性の絵画を見出す千里眼がもの凄い。
無名の画家であろうが自分の心に突き刺さった作品であれば迷わず手に入れる。

その能力は、やはり必然であった。

 

みんなセレブだ

菜穂もそうだが、母の克子も、夫の一樹もセレブだ。
マハさんのキュレってる作品の主人公って結構セレブで追いつけない。
とりあえず菜穂の実家は田園調布だ!コッテコテだな。(笑)


現実の自分とは、かけ離れているからチラッと妬みが生まれたりもする。(笑)


セレブな人の我儘や傲慢なとこが全面に隠さずに放出されてるもんだから、この作品は、登場人物を好きになれないって人が続出しそうだ。


だが、私は菜穂が愛おしくて仕方がなかった。

 

マハ作品を多く読んでいると、こんな我儘で自分勝手な自己中女性が堂々と書面を闊歩してるもんだから、いつしか慣れてしまってるのかもだ。

その、自己中なところも、芸術とは近い場所に存在していて芸術家なんてもう自己中でなきゃやってらんない生き物かもしれないし・・・と言い訳を考えてあげたいくらい菜穂をかばってしまう。

 

『異邦人』のキュレってる対象は日本画だ。

私も日本画を勉強してきたから、良くわかる。
徒弟制度が厳しくて理不尽に泣く世界が日本画なのだ。
そんな隠れた闇の部分をジリジリといぶして、チクチクと攻撃しながら若い画家を応援してくれてる作品にも思えてならない。

いや、本当に原田マハって凄い作家だ。
美術界の救世主か?と、崇めたくなるの私だけじゃないだろう。

キュレってるって何?

装画は高山辰夫さんの『いだく』東京国立近代美術館 蔵

とりあえず、キュレってるのかも?
と期待して手に取った。キュレっていた。(笑)

そもそも「キュレってる」という言葉は、とある本好きが集まる倶楽部で辛口書評で楽しませてくれる女性が命名した俗語である。

原田マハさんはキュレーターだ。

キュレーターとは・・・

博物館・美術館等の展覧会の企画を担う専門職。分野に関する情報収集、選別(選定)を行う。 展覧会のコンテンツの収集・配置等、展示に関わる責任者。

そんな美術作品に明るいマハさんが得意とするのは、絵画の世界を描いた作品。

『楽園のカンヴァス』『ジヴェルニーの食卓』『暗幕のゲルニカ』を三大印象派キュレ作品とし、『ユニコーンジョルジュ・サンドの遺言』『モダン』『太陽の棘』『異邦人』とキュレ作品を中心に次々と新作を書いている。

直接キュレってるわけではなくても、題名からみて美術と関連してる作品は多数存在している。

『翔ぶ少女』は、登場人物の名前からもわかるが、文庫本の表紙なんてまんまサモトラケのニケである。

『生きるぼくら』には、東山魁夷の「緑響く」だったり、マハさんの体の中に流れる絵画への愛すべき思いが作品にダダ漏れしているのだ。

文庫化で表紙を実際のニケの彫刻写真だったり、「緑響く」の装画へと変更してるのがこの2作だ。断然文庫の方が私は好きだ。

さて、キュレってるマハ作品というのは世間的に見ても高評価だと思う。
特に、印象派時代の作品などは途中で絵画を検索しながら読み進めるのだから読書と美術鑑賞が同時に行える。
そして、画家の生涯まで覗けちゃうんだからたまらない。
けれど、マハさんは「楽園のカンヴァス」や「ジヴェルニーの食卓」に「暗幕のゲルニカ」、そして「異邦人」と、絵画をモチーフにしてはいるが趣向を変えて挑んできている。

楽園は絵画ミステリーでジヴェルニーは印象派の時代の画家たちがてんこ盛りだし、ゲルニカは巨匠ピカソへと迫った大作で同時に平和への道しるべのような役割まで与えてしまっている。

絵画に対する造詣は素晴らしいのだが、ストーリー的には作為が見えすぎてしまっているのが特徴でもある。

そんなマハさんだが、憎まれっ子世に憚る的にスタンスを変えずに挑戦するど根性パワーが大好きだ。

『異邦人』を読了したら、とりあえず近所にある信濃美術館に東山魁夷を観に出かけたくなった。

 

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