なないろ日記 ~りんごの国から~ 

読書・折り紙・エコたわし作り・お絵かき・展覧会 あれもこれもと、七色にコロコロと襲い来る趣味との戦いの壮絶な記録!!

『ハリネズミの願い』トーン・テレヘン著 読了

2017年本屋大賞翻訳小説部門受賞作!

 

オランダ作家で詩人でもあるトーン・テレヘンは医業のかたわら、三十年以上にわたって、子どもたちのためにどうぶつを主人公とする絵本や物語を書き続け、近年大人向けに発表している〈どうぶつたちの小説〉シリーズの一冊として書かれた『ハリネズミの願い』を2016年6月に長山さきさんの全訳として発行された。日本上陸記念の年に、本屋の書店員が選ぶ「本屋大賞翻訳部門」で見事1位に選ばれた。他に絶版となっている『誰も死なない』は子供向けの作品も読んでみたい。

愛すべきひとりぼっち!

この作品の主人公は題名や表紙にまんま登場している、ひとりぼっちで自分に自身が持てない臆病なハリネズミ。ひとりぼっちってのにも理由があって、むしろ自ら「ひとりぼっち」を招いているハリネズミは生き方まるまるディフェンスで、常に誰かと交流することにビクついて心配しまくっている。

まっ、そんなだから誰もハリネズミの存在を気にしておらず、よって訪ねては来ないだろうし、訪ねて来ても寝てるか、ドアを開ける勇気が出るまでの長い時間で客人は去ってしまう。

そんな「ひとりぼっち」が一番の安心なはずのハリネズミがある時、自分の知っているどうぶつたちが誕生日や祝うことが何もない時に互いの家を訪ねあっているんじゃないか?と考えてみる。

 

ぼくがみんなを招待したとしたら・・・

 

ハリネズミは手紙を書き始める。

 

親愛なるどうぶつたちへ

ぼくの家にあそびに来るよう、

キミたちみんなを招待します。

 

しかし、ハリネズミはその後に一文を書き足している。

 

でも、だれも来なくてもだいじょうぶです。

 

はい?なんちゅう手紙だよ!ハリネズミ君っ・・・ってすでにツッコミどころ満載でスタートっ。
しかも、散々色々妄想した挙句に手紙を戸棚の引き出しにしまって送るのをやめてしまう。

 

究極のネガティブ優柔不断王で決まりですわ!

素晴らしき想像力!

でも、もしもこの手紙がどうぶつたちに渡ってしまったら!とハリネズミはあり得ない妄想をして困ってしまう。凄いぞ、ハリネズミよ。読者はここでしばらく「忍耐」を課せられるかのように、ハリネズミの臆病な妄想に付き合っていくことになる。

例えばカワカマスとコイやクジラにサメがやって来る。(おいおい水辺から陸にって凄いなそこんとこ!)高潮に乗ってやって来るんだから、絵面まで想像しちゃって「えっ?ポニョ的な?」と、一人クスッと笑ってしまった。

そのうちクマがやってきてハチミツを好きなだけ食べ尽くして帰っていくし、「キミがオレを怒らせてくれよ」と叫びまくるヒキガエルや、壁を壊さなきゃ入らない大きな風呂桶をプレゼントに持ってやってきたカバなど、

他のどうぶつとうまく付き合えないけれど、案外どうぶつたちのことをしっかりと観察しているのがわかってくる。

あれ?ちょっとまどろっこしいぞ、イラつくぞ!って胃袋ムカッと読んでいたはずなのに、凄く想像の翼が広がって頭の中にはハリネズミの心配事やどうぶつたちの身勝手な訪問ぶりにクスッとした笑いが増えていく。

ナイチンゲールの歌を聴いて泣かされたハリネズミ。一体、どんな歌だったのかしら?と中島みゆきの歌声が脳裏をかすめた。www

カメとカタツムリ

例えば、妄想の中にハリネズミから招待状をもらって一緒に向かうカメとカタツムリが出てくる。何を言っても怒らないカメと、いつも何かイライラと怒っているカタツムリのコンビはどこかの夫婦のようで苦い笑いがこみ上げてきた。(もちろん私はカタツムリだ!)この物語を大きく引っ張っていくキーパーソン的なこの二人に乞うご期待である。

やっぱ、ひとりって安心。それでいいのか?

56章まで妄想しまくって、最後にハリネズミはようやく気が付く。

「ぼくはつまらないヤツなんです。だから来ないでください。」と、出してもない招待状に対して再び手紙を出すべきと妄想をする。

ハリネズミは、ひとりがいい。だれとも関わりをもちたくない。怖い。面倒くさい。その他色々なのだ。

ところが、58章では招待してもいない思わぬ来客者がやってきた。
さて、それは誰でしょう?

ハリネズミの願いについて考察

さて、問題!ハリネズミの願いって何だったのかな?
私は、だれかを思う気持ちを思い出した。特に、プレゼントをせがまれているわけでもなく、好きなあの子を思ってプレゼントなんかを選んでいる時のあの小躍りするような優しい気持ちだったり・・・また会いたいなって素直な気持ちを。

リハビリ本

 翻訳ってだけで読むの後回しにする癖がある。書店で平積みになっていた時には、この可愛らしい表紙に「どうせ、啓発本か何かだろ?」的な一種の疑いの目を向けて食指が全く伸びなかった。

ところが、突然この本を思い出したのは自身が「ハリネズミ化」していた時だった。

とにかく、活字が読めない・・・しっかりとした読書を3ヶ月も放棄していた。

 機が熟した!リハビリがてらに174ページの旅に出た。今読むべき本を私は選んだ。
凄いぞ、自分。(笑)

あっ、それとこれってSNSの世界に置き換えて読み進めても楽しめちゃうかも。

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