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なないろ日記 ~りんごの国から~ 

読書・折り紙・エコたわし作り・靴下わっか指編み・お絵かき・展覧会 あれもこれもと、七色にコロコロと襲い来る趣味との戦いの壮絶な記録!!

『暗幕のゲルニカ』原田マハ著 読了

ゲルニカ パブロ・ピカソ

私の中で、生きているあいだに絶対観るべき作品の中に「ゲルニカ」はトップの次を独走している。ちなみに、トップは「サモトラケのニケ」である。


原田マハさんの最新作『暗幕のゲルニカの表題を見た途端に、2003年2月のあの事件を思い出す人は多いだろう。

 

ん?もしかしたら、何の事?と、首を傾げる人も多いのか?

ピカソが残したゲルニカという縦3.5メートル、横8メートルもの大きなモノクロームの作品は、1937年、スペイン内戦中に起こったナチスによるスペインの小都市・ゲルニカ空爆を批判して制作したものだ。

 

これは一般市民を標的にした人類史上初の無差別爆撃だった。

 

ピカソは故国を襲った惨劇に悲しみ、無慈悲なファシストたちに激しい憤りを抑えられず、激情にかられるままに猛然とスケッチを始めたという。

画面には、恐れいななく馬、驚きひるむ牡牛、瀕死の兵士、死んだ子を抱いて泣き叫ぶ母親・・・しかし、流されているであろう血の赤などは巨大なカンヴァスには乗せてはいない。

しかし、ゲルニカを前にした時に、その場所から一歩も動くことができないほどの衝撃を受けるだろう。爆薬の臭いが充満し、多くの市民の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。

ピカソが1本の絵筆を武器に、「戦争」との戦いが圧倒的な力で君臨していた。

ゲルニカ」は1937年5月に開催されたパリ万博のスペイン館に展示するため、スペイン共和国から依頼を受けてピカソが制作している。

ナチス空爆を批判した「ゲルニカ」は、当時ヨーロッパで覇権を強めるナチスにいつなんどき没収され破壊されるか分からない。それを避けるために「ゲルニカ」を亡命させる必要があった。

スペインに民主主義が再び戻った時、「ゲルニカ」は故郷スペインに返還されている。
1981年、ピカソの死後8年が経過してからのことであった。

 

「事件」は国連安保理のロビーで起きた

2003年2月・・・

9.11のニューヨークで起きたテロ事件を覚えているだろうか?
そこから、「テロに屈しない」という言葉を纏って、戦争を始めたアメリカ合衆国を・・・

国連安保理は、大量破壊兵器を所有している疑いのあるイラクに対して軍事行為に踏み切るか否かを巡って激しい議論を繰り広げていた。そして、イラク大量破壊兵器を持っている証拠を示す会見を行うために、当時のアメリカ合衆国国務長官コリン・パウエルが、各国のメディアが集まっている安保理議場のロビーに登場したとき、その背景に「暗幕」が掛けられていた。いつもならそこには「ゲルニカ」のタペストリーが掛かっているはずだった。

一体、誰が「ゲルニカ」を隠してしまったのか?なぜ?

理由は自明である。

ゲルニカ」の反戦への強いメッセージを世界が共有しているからこそ、国務長官の背景に空爆を批判する絵があってはまずいのだ。

この「事件」のニュースが即座に世界中を駆け巡り、リアルタイムで目にした記憶はまだ新しい。

 

戦争を始める時の人間のあざとさ。

ピカソの力・・・つまりアートの力。

 

現在、「ゲルニカ」は、マドリッドにあるソフィア王妃芸術センターに展示されている。

『暗幕のゲルニカ

ピカソゲルニカを制作していた時代と、9.11のあの事件が起きた時代を交互にフィクションが史実にうまく組み込まれて、ピカソに明るい人はもちろんだが、そうでない人も一気に作品の虜になるに違いない。

マハさんは、ピカソを描くことが夢だったんだろうと思う。

ゲルニカの制作過程では、欠かせないドラ・マールという愛人が登場する。
彼女は自身も芸術家(写真家)でありながら、ピカソという天才の影となって「ゲルニカ」の制作現場を撮影した愛人として有名である。

あっ、これを言えば、誰もが知ってるドラ・マール。

ピカソの代表作「泣く女」のモデルがドラ・マールなのだ。
あんな、酷い絵・・・私だったら、泣くわ。
だって、もうピカソったらいくら何でも酷い。
「泣く女」を観た時に、このモデルに同情しない人は果たしているのだろうか?
私ならば、ピカソに向かって絵筆を投げつけるけどね。

 

 


膨大な作品を世に残した天才画家は、その私生活も興味深い。
ピカソ幼少時代から天才的なデッサン力を持ちながら、青の時代、薔薇の時代、そしてゲルニカに至るまで、容易に鑑賞できる作品は少ない。そこで、ピカソの人物像を学ぶとより理解しやすく、柔軟な目で作品を楽しむ事が出来る。

本来は、こうした先入観なく絵画を鑑賞すべきだろうが、ピカソは難しいのだ。

小説で学ぶ、印象派の巨匠たち

学生は、ピカソ印象派の画家を学ぶのであれば『楽園のカンヴァス』『ジヴェルニーの食卓』『暗幕のゲルニカ』を読むことをおススメする。

 

 手っ取り早く美術史にお近づきになれるに違いない。


特に、アンリ・ルソーの「夢」をきっかけに絵画ミステリーを描いた作品『楽園のカンヴァス』では、ピカソがとびっきり恰好良く書かれている。
マハさんの、ピカソ愛がダダ漏れ作品で間違いない。

 

ピカソに影響を与えたスペイン画家のフランシスコ・デ・ゴアという異端の画家がいる。

マハさん、いつかゴヤをキュレってる作品も出してくれないかしら?と期待している。

 

『暗幕のゲルニカ』は、絵画のもつ圧倒的な無言のメッセージの力を原田マハさんの筆力でしっかりと世に解き放たれた秀逸な作品だった。

 

絵と文章・・・他には、何があるのだろう?
あっ、音楽だ!

芸術万歳!!!

 

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