『ばかもの』絲山秋子さん著 読了
『ばかもの』絲山秋子P220
いきなり冒頭から驚かされた。
19歳の大学生ヒデと粗雑な態度で感情表現が欠落している薄情な27歳の額子が性的な関係に溺れてるのだ。
これ、天気の良い昼間に読む本であってる?
と、躊躇してはみたがリアルな性描写はさておき、絲山さんの言葉のリズムの心地良さに、この言葉はいつまでも聴いていたいと虜になってしまっていた。
舞台が群馬県高崎市。秘境の地グンマーの男子学生の頭ん中がカパって垣間見れたりする。都会と田舎の違いとかね。
あらすじ
大学生時代に夢中になった額子とは、彼女からの「結婚する」と一方的な別れによって終わってしまう。額子が突きつけた終わり方は犯罪級で、だがしかしそのシーンは読者に雪の中の吐血のように鮮明な色を与えいる。
就職してからのヒデは何故かアルコール依存症となって自分の周りに迷惑を掛けながら嫌われていく。
最初の性に溺れた何処にでもいそうな男性が、あまりいそうにないアルコール依存症に変わっていく。
依存へ向かうきっかけを私は拾い忘れ、ページを戻って額子に辿り着く。
一方の額子は、不慮の事故で左腕を失い、離婚をしていた。ヒデと額子は、時を経て喪失した果てに再会を果たす。
ここの描写が・・・
凄く衝撃的な場面があった。
再会した額子がヒデにお願いをした
「右腕を洗って欲しいの。ガシガシ洗ってほしい。」
ガシガシ洗っての後は、ひらがなの「ほしい」が何故なのか気になる。
そして
「右の脇毛を剃って欲しいの。」
この場面で涙が出た。堪えるのが辛いくらいに額子を美しく写し哀しく魅せる文字が流れていた。
宿 題
さて、作中に度々登場するヒデの「想像上の人物」って、一体何を意味するのだろうか?一度だけ助けてもらっているのだけど、、、
宿題ですね、これ。
いやぁそれにしても、絲山秋子さんの静謐な言葉の美しさには惚れ惚れしちゃったなぁ。
で、内田有紀と成宮君で映画化されてたんだね。(知らなかった)
成宮君は、デビュー前から内田有紀さんの大ファンだったとか。
そんな憧れの人が額子役だなんて、成宮君もうどんな気持ちで作品に臨んだのかしら?
あのシーンとかも・・・
(//∇//)キャッ