『消滅世界』村田紗耶香さん著 読了
あらすじ
『消滅世界』村田紗耶香さん著
「セックス」も「家族も、世界から消える
日本の未来を予言する圧倒的衝撃作
壮大な世界。
でも、これは母と娘の物語ではないだろうか。
さすが村田紗耶香。
この作家はすごい。
-------中村文則
見たこともないほど
恐ろしい「楽園」が、
ここにはあります。
-------岸本佐知子
世界大戦をきっかけに、人工授精が飛躍的に発達した、もう一つの日本(パラレルワールド)。人は皆、人工授精で子供を産むようになり、生殖と快楽が分離した世界では、夫婦間のセックスは〈近親相姦〉とタブー視され、恋や快楽の対象は、恋人やキャラになる。
そんな世界で父と母の〈交尾〉で生まれた主人公・雨音。彼女は朔と結婚し、母親とは違う、セックスのない清潔で無菌な家族をつくったはずだった。だがある ことをきっかけに、朔とともに、千葉にある実験都市・楽園(エデン)に移住する。そこでは男性も人工子宮によって妊娠ができる、〈家族〉によらない新たな 繁殖システムが試みられていた……日本の未来を予言する衝撃の著者最高傑作。
amazonから引用
未来の日本
『コンビニ人間』で第155回芥川賞受賞をした村田紗耶香さん。
早速他の作品も読んでみたいと手を伸ばしたのは、2015年12月に発売された『消滅世界』だった。クレイジー紗耶香と呼ばれる謎に迫るべくディストピアな世界が広がっている。
愛し愛されて子どもを授かり、共に育てる。
当たり前の世界が消滅するのだ。
人工授精による妊娠、性行為などはほとんど誰もしなくなるのだ。
夫婦間の性交渉は近親相姦として罰せられる。妻も夫も外に恋人を作る。
新しい「家族」の形すらも、しだいに人工子宮の開発により男性も妊娠が出来るようになったことから消滅へと進んでいく。
世の中が、清潔さを欲し、クリーンな世界でしか生きられない。
クリーンとは、人と違うことを嫌う。
「普通」という概念の狂気で発狂をする。
こんな世界があるはずないじゃないか!!!
という気持ちがすっかりどこかへ消えてしまい、もしかして現在の晩婚化や未婚率の高さ、草食男子だとセックスレス夫婦とかっていう少子化の原因は「清潔」や「孤独知らず」な精神世界の偏りからすでに芽を出しているのかもしれない。
アニメのキャラクター
秋葉原のイメージが強いのだが、アニメのキャラクターにコスプレしてる若者の中には、キャラクターに恋をしてる人も多いのだろうか?
現実世界のヒトとリアルな恋愛は出来ないのだろうか?いや、「あっちの世界」の恋愛が「普通」となっているから、現実の恋愛は意味不明なのだろう。
『消滅世界』では、アニメキャラに恋をしているのだが、その歴代のキャラ全てを大事に袋にしまって連れ歩いている。ほっこりするような、むしろ捨てられない消えない何かを暗示しているのか、しだいにキャラと恋愛する行為すらが「正常」に見えてくる。
ディストピア
ディストピアとはユートピア(理想郷)とは正反対の社会である。
村田紗耶香さんの描くディストピア的社会では、主人公は他者とのつながりを探りながら、世界ともつながろうとする。
そして、その繋がりを失い始めた時、主人公は「正常」という名の狂気に発狂していく。
ラスト・・・怖っ
ディストピア小説のラストにふさわしく、読者へ世にも恐ろしい「楽園」の門がゆっくりと開いていく。嗚呼、怖いよおおおおお
ディストピア小説は、多くの人には受け入れられない分類かもしれない。
しかし、社会的問題を鋭く突いてくるから気分も悪くなる一方で焦りと恐怖の他に「考えてみよう」といった不思議な感情が生まれる。この世界の移り変わりに、決して目を背けずに向き合ってみるのも時にはいいものだ。