『終末のフール』伊坂幸太郎さん著 読了
『終末のフール』伊坂幸太郎 P301
最初に題名見た時は、ハライチのコントかと思って声に出して真似てみたよ。o(≧▽≦)o
これ、目次…
終末のフール
太陽のシール
籠城のビール
冬眠のガール
鋼鉄のウール
天体のヨール
演劇のオール
深海のポール
8年後に小惑星が地球に堕ちて、地球が滅亡する。
混乱の5年が経過して、あと残すところ3年の今をどう生きているかを描く8つの短編集。
舞台は、仙台北部の団地「ヒルズタウン」の人々。
なぜ地球が滅亡すると分かった混乱の時や、滅亡するその直前をドラマチックに描く事なく、あと3年ってとこの1番面白味に欠けそうな時期にスポットを当てたのだろうか?と読む手を休めて考えたりした。
その答えはきっとこれだ。
ふと立ち止まらせる言葉がハライチなコントの8編に所狭しと散りばめられているのだ。
いちいち胸をうつ一言に、自分の過去や現在を擦り合わせて黄昏る。
特に「鋼鉄のウール」がいい!
苗場というキックボクサーの話で、どんな状況でも何ら変わりがない。そんな変わらない安心によって誰もが希望を見つけ、足元に明かりが灯る言葉が転がっている。たぶん、読者はこの章に救われてるんじゃないかな。
「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」
「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」
読了後に、この言葉が本から浮かび上がって私の胸にストンと落ちた。
伊坂さんってホント、言葉の魔術師だね。
『ナラタージュ』島本理生さん著 読了
過去が動き始める危険な恋愛小説・・・
『ナラタージュ』島本理生著P373
こびり付いて剝がせない恋がここにあった。
作者が若干20歳にして執筆した恋愛小説。(平成17年2月初版)
ナラタージュとは?
ナラタージュとは、映画などで、主人公が回想の形で、過去の出来事を物語ること。
ー作品より引用ー
ナターシャ(宇宙戦艦でお馴染みの)でも、ナタラージュでもないから気を付けるべし。(笑)
この作品は、主人公工藤泉は、16歳(高校生)から社会人になるまでの不確定な恋をナラタージュしている。
久しぶりに遠ざかっていた恋愛小説に挑もうと正座して佇まいを整えた。
(最近はめっきり、恋だとかって食べたくなくてさっ)
島本理生さんが20歳の時に執筆したという驚きの事実は読了後に知ったので、読んでる最中は同年代(40代)の作家だと勝手に思い込んでいた。
島本さんを今頃知る私ってどうなん?( ̄∇ ̄)
言葉が熟しているからか、好きな俳優が出演している月9の録画を一気に観てしまったような没頭型の4時間の読書だった。
16歳で初めて男性に恋をする。
「きっと、子供だったから愛とは違うとかじゃなくて、
子供だったから、愛してるってことに
気付かなかったんだよ」
呪文のような作中の言葉に過去が現在にしゃしゃり出て来て、会わなくなった恋しい人が痛みや憎しみと共にリアルに現れてしまう。
そして、目の前の日常の穏やかな温度を一気に変えてしまう。
危険な小説だ…
終わったと思った過去が動き出してしまうから。
主人公の泉や、恋愛相手の高校教師の葉山、長野が故郷の小野君といった自分本位が目立つ登場人物を自己陶酔なバカップルだと決め付けずに、一生に一度の恋の例題1)だと思って飛び込んでみない?
2017年秋に松本潤(葉山役)と有村架純(泉役)で映画化が決定してるのね。
(映画館まで行かないよ!ドラマでお願いしたいわ。)
で、工藤泉役は、私なら女から嫌われ度が高そうな若き日の裕木奈江がいいわ。
(ポケベルが鳴らなくての女優さん)
http://www.my-pro.co.jp/aa/takahashi.htmlより引用
『消滅世界』村田紗耶香さん著 読了
あらすじ
『消滅世界』村田紗耶香さん著
「セックス」も「家族も、世界から消える
日本の未来を予言する圧倒的衝撃作
壮大な世界。
でも、これは母と娘の物語ではないだろうか。
さすが村田紗耶香。
この作家はすごい。
-------中村文則
見たこともないほど
恐ろしい「楽園」が、
ここにはあります。
-------岸本佐知子
世界大戦をきっかけに、人工授精が飛躍的に発達した、もう一つの日本(パラレルワールド)。人は皆、人工授精で子供を産むようになり、生殖と快楽が分離した世界では、夫婦間のセックスは〈近親相姦〉とタブー視され、恋や快楽の対象は、恋人やキャラになる。
そんな世界で父と母の〈交尾〉で生まれた主人公・雨音。彼女は朔と結婚し、母親とは違う、セックスのない清潔で無菌な家族をつくったはずだった。だがある ことをきっかけに、朔とともに、千葉にある実験都市・楽園(エデン)に移住する。そこでは男性も人工子宮によって妊娠ができる、〈家族〉によらない新たな 繁殖システムが試みられていた……日本の未来を予言する衝撃の著者最高傑作。
amazonから引用
未来の日本
『コンビニ人間』で第155回芥川賞受賞をした村田紗耶香さん。
早速他の作品も読んでみたいと手を伸ばしたのは、2015年12月に発売された『消滅世界』だった。クレイジー紗耶香と呼ばれる謎に迫るべくディストピアな世界が広がっている。
愛し愛されて子どもを授かり、共に育てる。
当たり前の世界が消滅するのだ。
人工授精による妊娠、性行為などはほとんど誰もしなくなるのだ。
夫婦間の性交渉は近親相姦として罰せられる。妻も夫も外に恋人を作る。
新しい「家族」の形すらも、しだいに人工子宮の開発により男性も妊娠が出来るようになったことから消滅へと進んでいく。
世の中が、清潔さを欲し、クリーンな世界でしか生きられない。
クリーンとは、人と違うことを嫌う。
「普通」という概念の狂気で発狂をする。
こんな世界があるはずないじゃないか!!!
という気持ちがすっかりどこかへ消えてしまい、もしかして現在の晩婚化や未婚率の高さ、草食男子だとセックスレス夫婦とかっていう少子化の原因は「清潔」や「孤独知らず」な精神世界の偏りからすでに芽を出しているのかもしれない。
アニメのキャラクター
秋葉原のイメージが強いのだが、アニメのキャラクターにコスプレしてる若者の中には、キャラクターに恋をしてる人も多いのだろうか?
現実世界のヒトとリアルな恋愛は出来ないのだろうか?いや、「あっちの世界」の恋愛が「普通」となっているから、現実の恋愛は意味不明なのだろう。
『消滅世界』では、アニメキャラに恋をしているのだが、その歴代のキャラ全てを大事に袋にしまって連れ歩いている。ほっこりするような、むしろ捨てられない消えない何かを暗示しているのか、しだいにキャラと恋愛する行為すらが「正常」に見えてくる。
ディストピア
ディストピアとはユートピア(理想郷)とは正反対の社会である。
村田紗耶香さんの描くディストピア的社会では、主人公は他者とのつながりを探りながら、世界ともつながろうとする。
そして、その繋がりを失い始めた時、主人公は「正常」という名の狂気に発狂していく。
ラスト・・・怖っ
ディストピア小説のラストにふさわしく、読者へ世にも恐ろしい「楽園」の門がゆっくりと開いていく。嗚呼、怖いよおおおおお
ディストピア小説は、多くの人には受け入れられない分類かもしれない。
しかし、社会的問題を鋭く突いてくるから気分も悪くなる一方で焦りと恐怖の他に「考えてみよう」といった不思議な感情が生まれる。この世界の移り変わりに、決して目を背けずに向き合ってみるのも時にはいいものだ。
『私の消滅』中村文則さん著 読了
『私の消滅』中村文則さん
めちゃくちゃ暗いです・・・💦
なのに、読む手が止まらず退路を断たれるほど惹き込まれた2時間。
表装からして『教団X』と同じような香りがプンプン・・・
純文学とミステリーを融合させ必死でメッセージを突きつけてくる。
ネタバレ無しで読んで欲しい。
現代の脳科学では、すでにあり得るのか?と、リアルに現実化しそうで怖い思いをしながら一体どうなってしまうのだろう?と、目が離せなくなる。
誰が被害者で、一体加害者はどうやって作られていくのか?
目を逸らしてはいけない、そんな悪か善かではない場所に連れていかれた。
ラストのあとがき・・・
中村文則氏からのメッセージは、『教団X』のメッセージと何ら変わってなかった。
この世界は時に残酷ですが、共に生きましょう。(中村文則)
私、これかなり好きな作品になりました。
前作の『あなたが消えた夜に』と、『教団X』とたぶん3セットだと思う。
周囲からはワケワカメ作品と評判の『あなたが消えた夜に』を読んでみよう。
『アンマーとぼくら』有川浩 読了
『アンマーとぼくら』有川浩 P301
あらすじ
「アンマー」とは沖縄で「お母さん」のこと。
有川浩さんが、かりゆし58の名曲「アンマー」に着想を得たお話だとか。
沖縄を舞台に(一部北海道も)父と息子、そして父の再婚相手の「おかあさん」との家族の絆のお話。
ってか、お父さんって人がさあ、坂本克己ってんだけど本当に子どもなんだよ。
飛行機に乗れば、子どもを差し置いて窓際を陣取ってしまうし
大声あげてはしゃいじゃいけない場所で、もちろん大声あげちゃうし
何よりも、オジギソウの葉に触って閉じる様を観るのが大好き。
後ろから歩いてくる子どもを泣かせてまで、全てのオジギソウの葉を閉じてしまうのだから正真正銘の子どもって言ってもいいくらだ。
そんな父を見ていたせいか、冷静で場の空気を読むような子どもだった主人公の「リョウ」。
小4で母を亡くし、翌年には父親が再婚するっていう頭に血が上るようなジェットコースターに乗せられて物語が進む。
子どもな人
ここまで子どもな人を描ける有川さんって、「憎めないわね」って駄目な男を許してしまうタイプだったりする?
子どもな父親に隠された秘密ってところを丁寧に描くよりも、その「子どもっぷり」を前面に出してきたら途中までイライラしたのは確かだわ。
どことなく、私自身とも共通点があったので「憎めないわ」と私もチラッと思ったけどね。
この父親って、息子のためによかれと思ってやっていることが裏目に出てしまう。
頼って欲しい!と精一杯に頑張るんだけど、頼ってもらいたい息子には淋しい思いを抱かせてしまうんだよね。
みんな、よかれと思っているのにすれ違うことって人生あるあるだわ。
不思議な話
今回は社会派な作品でもなければ胸キュンものでもなくて、「絆」をテーマにした家族や友情や土地の話かな~。
読了後、なんだそれ!ってボーっとしちゃったけど、有川さんが描きたかった「よかれと思って」の部分だけはしっかりと私の胸に残っていた。
金ちゃん
登場人物で「リョウ」の友人の金ちゃんが実にいいんだよ。
リョウと金ちゃんの友情に涙しちゃったわ。
北海道土産の激マズなジンギスカンキャラメル、ちょっと食べてみたくなったわ。
「過去は変わらない。変えられるのは今だけだ。」
よかれと思って、大切な人が子ども染みた態度で空回りしてるのを見たことがあるかな?
私の場合、自分がそうなってしまっている時が多々ある。💦
そんな時に冷めた態度や言葉がどれほど相手を傷つけるのかを知ってほしい。
きっと、うんざりした気持ちに嘘はつけないだろうけど・・・
今、この一瞬が戻れない過去になってしまうかもしれない。
でも、それも人生。確かに正しく歩いていくことなんてできやしない。
帯には「これは、現時点での最高傑作です。」有川浩 とある。
いや、最高傑作は他にあった気がするけど・・・💦
それにしても装幀が素敵!
コバルトブルーな沖縄の海の表紙をめくると、沖縄風の絵柄が登場する!
これには唸りました。
昔、こんな柄の振袖が流行したっけ!懐かしい~。(たぶん27年前)
『コンビニ人間』村田沙耶香 読了
『コンビニ人間』村田沙耶香 P151
第155回芥川賞受賞作!
芥川賞なのに面白いっ。( ̄▽ ̄)
2度読みしちゃってますわ。
あらすじ
今では「無いところが無い」コンビニという透明な箱の中に存在する「コンビニ店員」の生態系から、「正常な人間という気持ち悪さ」と生き辛さ、その中で生きていくしかない「適応」に迫った作品。
著者のクレージー沙耶香氏も、実際にコンビニで働きながら作家生活を送っている。
まさしくリアルコンビニ店員だ。
主人公の古倉恵子は、18歳から18年間コンビニで働き続けた36歳、未婚女性だ。
彼女は、ちょっと変わった思考で世の中を見ている。
例えば幼稚園のころ、公園で死んでいた青い綺麗な小鳥に向かって取り囲んだ子ども達は「どうしたんだろう?」と泣いているのに、恵子は「今日、これを焼いて食べよう」と言うような、大人をざわつかせ奇妙がられるような子どもだった。
そんな古倉恵子がコンビニで出会ったのは「人間」ではない「コンビニ店員」として正常な部品に生まれ変わった自分だった。
クレージー紗耶香
村田沙耶香氏が何故クレージー沙耶香と呼ばれているのか誰か教えて欲しい。
鋭く抉るわけでもないくせに、私も心当たりあるとザワザワした気持ちにさせながら「みんな同じじゃなきゃいけない」といった世の中の気持ち悪さから救いの手を差し伸べている。
芥川賞受賞作品の選考方法何か変わった?ってなくらい、早急に世の中に必要なメッセージ性を孕んだテーマなだけに多くの方に是非とも読んで欲しい作品‼️